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大阪地方裁判所 昭和60年(ワ)3917号 判決

原告

河野千春

右訴訟代理人弁護士

林信一

皆見一夫

同訴訟復代理人弁護士

中川晴夫

被告

池田重成

被告

東京海上火災保険株式会社

右代表者代表取締役

松田昭三

右訴訟代理人弁護士

小原望

叶智加羅

主文

1  被告池田重成は原告に対し、四〇六六万一四一一円とこれに対する昭和六〇年二月一五日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告東京海上火災保険株式会社は原告に対し、四〇六六万一四一一円とこれに対する昭和六〇年二月二〇日から完済まで年六分の割合による金員を支払え。

3  原告の被告らに対するその余の請求を棄却する。

4  訴訟費用はこれを五分し、その三を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

5  この判決は、第1項及び第2項に限り仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告池田重成(以下、「被告池田」という。)は原告に対し、一億一九六六万九八〇九円及びうち一億〇九五五万七〇〇九円に対する昭和六〇年二月一五日から、うち一〇一一万二八〇〇円に対する昭和六〇年五月三一日から各完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告東京海上火災保険株式会社(以下、「被告会社」という。)は原告に対し、一億円及びうち九九七〇万七七一四円に対する昭和六〇年一月二〇日から、うち二九万二二八六円に対する昭和六〇年五月三一日から各完済まで年六分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  第1、第2項につき仮執行宣言。

二  請求の趣旨に対する被告会社の答弁

1  原告の被告会社に対する請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  請求原因

一  本件事故の発生及び被告池田の責任

1  被告池田は、昭和五七年一一月二三日午前六時一〇分頃、普通乗用自動車(登録番号、鳥五五り三九二九号。以下、「加害車両」という。)を運転し、兵庫県三田市東本庄一三〇六番地先の信号機により交通整理の行われている交差点を南から北に向かつて走行中、折柄同交差点を東から西に向かつて進行していた原告運転の自動車(登録番号、大阪四〇そ二三五〇号。以下、「原告車両」という。)の左側前部に加害車両前部を衝突させた(以下、「本件事故」という。)。原告は、本件事故により第六頸椎圧迫骨折、頸髄損傷、脳挫傷、下頸骨骨折の傷害を受けた。

2  加害車両が右交差点に差しかかつた際には、その対面信号は赤色を表示していたのであるから、被告池田としては、直ちに加害車両を同交差点手前で停止させ、もつて東西道路上を青信号に従つて同交差点内に進入してくる車両との衝突事故を未然に防止すべき注意義務を負つていたにもかかわらず、同被告はこれを怠り、交差点手前で停止することなく対面信号の赤色表示を無視して漫然と加害車両を同交差点内に進入させた過失により本件事故を惹き起こした。

3  被告池田は、本件事故当時加害車両を所有し、これを自己のために運行の用に供していた。

よつて、被告池田は、民法七〇九条または自動車損害賠償保障法(以下、「自賠法」という。)三条により後記損害を賠償すべき責任を負うものである。

二  治療経過及び後遺障害

1  原告は、前記受傷のため、(一) 昭和五七年一一月二三日から同五八年八月三一日までの二八二日間三田市民病院に、(二) 昭和五八年八月三一日から同五九年五月七日まで二五一日間兵庫県玉津福祉センター・リハビリテーションセンター附属中央病院(以下、「玉津福祉センター」という。)にそれぞれ入院して治療を受けた。

2  原告の前記受傷は、右の長期間にわたる治療にもかかわらず治癒するに至らず、原告に両上下肢の不全麻痺、右上肢・体幹・両下肢の知覚麻痺の重篤な後遺障害を残存させたまま昭和五九年五月七日その症状が固定した。

原告は、右後遺障害により、右手・右下肢を自らの意思で動かすことができず、左上下肢も自力で動かせはするもののその筋力が極端に衰弱するに至つている。このため、室内の平担な床面を車椅子で移動する程度のことはできるけれども、それ以外の食事の支度、入浴、衣服の着替え、散歩等の日常生活は他人の介助なしに行うことは困難であり、室内において安静に仰臥して過ごすよりほかないような状態である。したがつて、右後遺障害は、自賠法施行令二条別表(以下、「自賠責等級表」という。)に定める第二級三号(「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し随時介護を要するもの」)に該当し、原告はこれによりその労働能力を全部喪失したものというべきである。

三  損害

1  治療費 九八万五九三〇円

原告は、前記入院治療のための治療費として三田市民病院に対し九三万六二六〇円、玉津福祉センターに対し四万九六七〇円をそれぞれ支払つた。

2  入院雑費 五八万五二〇〇円

原告は、前記五三二日間の入院期間中、一日当たり一一〇〇円の割合による雑費を支払つた。

3  付添看護の費用 三一二万三七四〇円

(一) 職業付添

原告は、三田市民病院での入院期間中付添看護を必要とする状態にあつたところ、昭和五七年一一月二五日から二三日間は職業付添婦田中文子の付添看護を受け、その費用として二八万七五四〇円を支払つた。

(二) 近親者付添

原告は、三田市民病院での二八二日間にわたる入院期間中、通常の付添看護のほか、無意識状態のまま暴れる原告の自傷事故を防ぐためにさらに二名の付添看護人を必要とし、実際にも原告の母田中美智子及び原告の婚約者(現在の夫)河野三男の付添看護を受けたものであるが、両名による付添看護費用として一日あたり七二〇〇円を必要としたほか、右両名が三田市民病院へ来院するための交通費として五九万五〇〇〇円、原告の母が付添のため家業の農業に従事することができなかつたことにより自家栽培する予定の田植用の苗を自家栽培することができずやむなく他から購入した費用として一五万四四〇〇円をそれぞれ支出した。

4  装具・自宅改造費 四八万三一七〇円

原告は、前記治療及び後遺障害のため、両下肢・頸部等に着装する装具、歩行車、車椅子を必要とし、その製作・購入代金一六万一三〇〇円を支払つたほか、自宅での日常生活を容易にするため自宅のシャワーやトイレを改造し、その工事代金三二万一八七〇円を支払つた。

5  休業損害 一四六万六一二五円

原告は、高等学校卒業後郵政省郵政事務官に採用され、本件事故当時、兵庫県宝塚市所在の宝塚駅前郵便局に勤務し、昭和五六年一一月から同五七年一〇月までの事故前一年間に、国家公務員普通職群級別俸給表(以下、「本件俸給表」という。)に定める三級三九号俸給及び調整手当・超過勤務手当・特殊勤務手当・期末手当・勤勉手当等の各種手当(ただし、通勤手当を除く。)の合計二六五万八四七七円の給与所得を得ていたものであるから、昭和五七年一二月一日から同五九年四月三〇日までの五一五日間、従前どおりに稼働しておれば、右期間中に三七五万一〇〇一円の給与の支給を受けえたはずである。

2,658,477÷365×515=3,751,001(円)

しかるに、本件事故による受傷のため右期間中全く稼働することができず、その結果、同期間分として二二八万四八七六円の給与の支給しか受けることができなかつた。したがつて、その差額一四六万六一二五円が右期間の休業による損害である。

6  逸失利益 一億〇三三五万四二八〇円

(一) 原告は、昭和三三年六月一三日生れで、本件事故当時健康な女子であり、前記のとおり郵政事務官として給与所得を得ていたところ、原告のような郵政事務官(国家公務員)の場合には、法律及び規則の定めるところにより、休職・病気休暇・欠勤等の特段の事情のない限り、一二月間(四月一日から翌年三月三一日までの間)勤務する毎に、本件俸給表上、4号俸ずつ上位の号俸に昇給する(ただし、同等級の最上位の号俸まで昇給すると一等級上位の同金額の号俸に昇格する。)扱いとなつている。

(二) そうすると、原告の場合も、本件事故に遭わなければ、前記症状固定時(当時原告は満二五歳)以降国家公務員を満六〇歳で定年退職する昭和九四年三月三一日までの三五年間、引き続き郵政事務官として勤務し、その間毎年別紙俸給表のとおり昇給する扱いを受けるため、事故前と同額の各種手当を含む別紙給与表のとおりの給与所得を得ることができたはずである。また、右退職時には国家公務員等退職手当法四条に定める退職手当を得ることができ、右退職時以降満八一歳に至るまでの二一年間にわたつて毎年国家公務員等共済組合法に定める退職共済年金を受給することもできたはずである。のみならず、右退職後も、就労可能とみられる満六七歳までの七年間にわたつて毎年昭和五九年度賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計女子労働者の該当年齢の平均給与額に相当する収入を得ることができたものというべきである。

(三) そこで、原告が、本件事故によつて失うことになる右の収入総額からホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して、原告の逸失利益の前記症状固定時における現価を算出すれば、次のとおりとなる。

(1) 給与所得及び退職後満六七歳までの間の稼働による収入は、別紙後遺症逸失利益表のとおり、別紙給与表のとおりの昇給分を加算した額に各年度別のホフマン計数を乗じて算出した額の合計八六六一万〇一七九円であるところ、原告は、昭和五九年五月一日以降も九三万一〇二五円の給与の支給を受けたので、その差額八五六七万九一五四円が逸失利益である。

(2) 退職共済年金は、別紙年金総額表のとおり、各年度の年金額に各年度別ホフマン計数を乗じて算出した額の合計一五八二万三〇九五円から、別紙掛金総額表のとおり、各年度の掛金年額に各年度別ホフマン計数を乗じて算出した退職時までの共済掛金の合計額四〇五万二七〇九円を控除した一一七七万〇三八六円である。

(3) 退職手当は、国家公務員等退職手当法四条に基づき、別紙俸給表の最終俸給月額二八万四五〇〇円を基準に算出した一五六四万七五〇〇円にホフマン係数(三三年)を乗じて算出した五九〇万四七四〇円である。

7  将来の介護料 五七六六万二七〇〇円

(一) 原告が自賠責等級表第二級三号に該当する後遺障害のため、生涯にわたつて他人の介助なしに日常生活を営むことが困難な状態にあること、その症状固定時に満二五歳の女子であつたことはいずれも前記のとおりである。

(二) そうすると、原告は、右症状固定後五六年間(昭和五九年簡易生命表二五歳女子の平均余命)にわたつて他人の介護を必要とし、かつ、右介護のための費用としては、一日当たり六〇〇〇円が必要である。そこで、右介護に必要な費用総額からホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して右症状固定時における介護料の現価を算出すると、五七六六万二七〇〇円となる。

6,000×365×26.33=57,662,700(円)

8  慰藉料 二二七六万円

原告は、被告池田の信号無視という一方的かつ重大な過失に基づく本件事故により、瀕死の重傷を負つて二か月余り意識不明のまま生死の境をさ迷い、辛うじて一命は取り止めたものの、わずか二五歳の若さで生涯起居すら自由にならない極めて重篤な後遺障害に苦しめられることとなつたものであつて、これらの事情やその他諸般の事情に照らせば、原告が本件事故によつて受けた深甚な精神的肉体的苦痛を慰藉するに足りる慰藉料の額としては二二七六万円が相当である。

9  弁護士費用 一〇〇〇万円

原告は、被告池田に対する本訴の提起及び追行を原告訴訟代理人に委任し、その費用及び報酬として一〇〇〇万円を支払うことを約した。

以上合計二億〇〇四二万一一四五円

四  損害の填補

原告は、自動車損害賠償責任保険から本件事故の損害の賠償として保険金一六八七万円、被告会社から自家用自動車保険無保険車傷害条項に基づく保険金の内金五〇〇〇万円の支払を受けた。

五  被告会社の保険金支払義務

1  本件契約の締結

訴外河野三男は、昭和五七年二月被告会社(保険者)との間で、被保険自動車を原告車両、保険期間を昭和五七年三月一九日から同五八年三月一九日までの間とし、左記無保険車傷害条項を含む自家用自動車保険契約(以下、「本件契約」という。)を締結した。

2  無保険車傷害条項

本件契約中の無保険車傷害条項の概要は次のとおりである。

(一) 被保険者兼保険金請求権者

被保険自動車の正規の乗車用構造装置のある場所に搭乗中の者を被保険者とし、無保険車事故によつて損害を被つた被保険者を保険金請求権者とする。

(二) 保険金限度額

一億五〇〇〇万円

(三) 保険金支払事由

被保険者が、無保険自動車(自賠責保険以外に適用される対人賠償保険金のない自動車)の所有・使用または管理に起因して生命・身体を害され、その直接の結果として自賠責等級表に定める後遺障害が生じたことにより被保険者が損害を被り、かつ、その損害について法律上賠償責任を負う者があること。

(四) 支払われるべき保険金の額

賠償義務者が被保険者に対して法律上負担すべき損害賠償責任の額から、自賠責保険によつて支払われる金額及び賠償義務者及び第三者が損害填補のために支払つた金額の合計額を控除した額。

(五) 保険金支払義務の履行期

被保険者が被告会社に保険金の支払を請求した時。

3  保険金支払事由の発生等

(一) 加害車両は無保険自動車であつたところ、本件契約の保険期間内に発生した本件事故により、被保険者である原告がその身体を害され自賠責等級表第二級三号に該当する後遺障害が生じ、損害を被つたこと、右損害につき被告池田が賠償義務を負うことはいずれも同被告に対する請求原因のとおりである。

(二) 保険金請求権者である原告は、遅くとも昭和六〇年一月一九日に到達した書面により、被告会社に対し本件無保険車傷害条項に基づく保険金の支払を請求した。

よつて、原告は、民法七〇九条または自賠法三条に基づき被告池田に対し、前記三の1ないし9の損害合計二億〇〇四二万一一四五円から前記四の既払額を控除した一億三三五五万一一四五円のうち一億一九六六万九八〇九円及び内金一億〇九五五万七〇〇九円に対する本件事故の後である昭和六〇年二月一五日から、内金一〇一一万二八〇〇円に対する訴状送達の翌日である同年五月三一日から各完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、本件契約に基づいて被告会社に対し、請求原因三1ないし9の損害合計額(ただし、被告会社との関係でも損害の一部とみなされる弁護士費用の額は九六九万円である。)二億〇〇一一万一一四五円から前記四の既払額六六八七万円を控除した残額一億三三二四万一一四五円のうち一億円の保険金及び内金九九七〇万七七一四円に対する催告の日の翌日である昭和六〇年一月二〇日から、内金二九万二二八六円に対する訴状送達の日の翌日である同年五月三一日から各完済まで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三  請求原因に対する被告会社の認否

一  請求原因一の事実関係は認める。

二  同二1の事実は知らない。同二2の事実のうち、原告の症状が昭和五九年五月七日の固定したこと、原告の後遺障害が残存したことは認めるが、それが原告主張のように重篤なものであることは否認する。右後遺障害は自賠責等級表第三級三号(「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」)に該当する程度のものであつて、これにより原告が終身労務に服することができないということはあつても、生涯にわたつて介護を要するようなことはない。現在でも専属の介護人が原告に付き添つているわけではなく、原告の夫が随時原告の身の回りの世話をしている程度である。

三1  同三1ないし4の事実は知らない。仮りに同4のような支出があつたとしても、原告の後遺障害の程度に照らせば、自宅改造費や装具代などは本件事故と相当因果関係に立つ損害とはいえない。

2  同三5、6の事実のうち、原告が高等学校卒業後郵政事務官に採用され、事故当時宝塚駅前郵便局に勤務していたことは認めるが、その余の事実は知らない。なお、国家公務員も、女性職員の場合は出産、育児、夫の転勤等の事情により、定年まで在職する蓋然性は極めて低く、現実に高卒女子の郵政事務官の平均在職年数は一五年一〇か月であるから、本件事故がなかつたならば、原告が満六〇歳の定年まで執務を継続していたとはとうてい言い得ないというべきである。また、右在職期間中においても、昇給は欠格事由なしに良好な成績で勤務したときに発令されるものであるから、毎年必ず昇給する高度の蓋然性があるということもできない。

3  同三7は否認する。原告の後遺障害の程度に照らし、将来の介護の必要はないというべきである。

4  同三8は否認する。原告は、原告の自認するもののほか、本件事故により被告会社から搭乗者傷害保険金一〇〇〇万円の支払を受けているので、慰藉料額の算定に際しては右事実も斟酌されるべきである。

5  同三9は知らない。

四  同四の事実は認める。

五1  同五1の事実及び同五2の(一)ないし(三)の事実はいずれも認める。

2  同五2の(四)の事実は否認する。本件契約中の無保険車傷害条項に定められた支払われるべき保険金の額は、被保険者が後遺障害によつて被る損害(すなわち後遺障害による将来の逸失利益及び後遺障害に関する慰藉料)の額から既払額を控除したものに限られるのであつて、本件事故によつて原告が被つた全損害の額から既払額を控除したものではない。なお、右条項上、原告が賠償義務者に対する権利行使のために要した弁護士費用は、被告会社の書面による同意を得て支出したものについてのみこれを保険金に加算して支払うものと定められているが、被告会社が原告の本件権利行使について書面による同意をした事実はないから、右弁護士費用相当額を加算して保険金を支払うべきものではない。

3  同五2の(五)の事実は否認する。被告会社が原告に対して支払うべき無保険車傷害条項に基づく保険金の額は、損害額を定める判決が確定するまでは決まらないのであるから、右保険金支払義務の履行期が到来するのは本判決確定の日というべきである。

4  同五3(一)の事実は認める。但し、原告の後遺障害は自賠責等級表第三級三号に該当する程度のものである。

5  同五3(二)のうち、原告が被告会社に対し、書面による無保険車傷害条項に基づく保険金の支払を請求したことは認める。

第四  証拠関係〈省略〉

理由

第一被告会社に対する請求について

一被告会社の保険金支払義務

1  請求原因五1の事実(本件契約の締結)、同五2の(一)ないし(三)の事実(同契約中の無保険車傷害条項の一部)、同五3の事実(保険金支払事由の発生。但し、原告の後遺障害が自賠責等級表第二級三号に該当するとの点は除く。)はいずれも当事者間に争いがない。

右事実によれば、被告会社は、本件契約中の無保険車傷害条項に基づき、原告に対し所定の保険金を支払う義務を負うものといわなければならない。

2  ところで、右保険金の額につき、原告は、賠償義務者において賠償すべき全損害の額から既払額を控除したものとするのが右無保険車傷害条項の定めであると主張するのに対し、被告は、全損害ではなく後遺障害のみに基づく損害の額から既払額を控除したものとするのが右条項の定めであると争うので、まず、この点について検討するに、成立に争いのない乙第一号証(自家用自動車保険普通保険約款)によれば、右無保険車傷害条項上、保険金支払義務の発生要件に関し、保険者は、無保険自動車の所有、使用または管理に起因して、被保険自動車の正規の乗車用構造装置のある場所に搭乗中の被保険者の身体が害され、その直接の結果として自賠責等級表に掲げる後遺障害が生じることによつて被保険者が被る所定の損害(自家用自動車保険普通保険約款第三章第八条に定める損害)について、賠償義務者がある場合に限り、無保険車傷害条項および一般条項に従い、保険金を支払う旨の定め(同約款第三章第一条一項)及び保険者は、一回の無保険車事故による前項の損害の額が、自賠責保険によつて支払われる金額を超過する場合に限り、その超過額についてのみ保険金を支払う旨の定め(同二項)が存在することが認められるので、一見したところ、右保険金の額は、自賠責等級表に掲げる後遺障害が生じることによつて被保険者が被る損害の額から自賠責保険金等による既払額を控除したものであるかのようにみえないわけではないけれども、他方、右証拠によれば、保険者が保険金を支払うべき損害の額は、賠償義務者が被保険者の被つた損害について法律上負担すべきものと認められる損害賠償責任の額によつて定める旨の規定(約款第三章第八条一項)があることが認められるのであつて、これと前記第一条の定めとを併わせ考えるならば、右第一条の定めは保険金支払義務の発生要件を規定したものであり、この要件を充たした場合に発生する保険金支払義務の範囲、すなわち保険金の額は同第八条に定めるとおりであるとみるのが約款の解釈としても合理的であり、無保険車傷害保険制度の趣旨にも合致するものというべきである。

そうすると、本件保険金の額は、賠償義務者である被告池田の負担する全損害の賠償責任の額に基づいて定めるべきものであり、具体的には、後記二2ないし9の額から三の既払額を控除し、これに損害とみなされる同二10の弁護士費用を加算したものといわなければならない。

二損害

1  治療経過及び後遺障害

〈証拠〉によれば、原告は、本件事故による受傷のため請求原因二1のとおりの経過で入院治療を受けたことが認められるところ、原告の右受傷による症状が昭和五九年五月七日固定し、後遺障害が残存したことは当事者間に争いがない。

そこで、原告の右後遺障害の内容及び程度について判断するに、〈証拠〉によれば、原告の後遺障害は、原告主張の請求原因二2のとおりであることが認められるので、右後遺障害は、自賠責等級表第二級三号(「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」)に該当するものということができる。したがつて、原告はこれにより、その労働能力を全部喪失したものといわなければならない。

2  治療費

〈証拠〉によれば、請求原因三1の事実が認められる。

3  入院雑費

原告が合計五三二日間にわたつて入院治療を受けたことは前記認定のとおりであり、経験則上その期間中一日当たり一〇〇〇円の割合による雑費(合計五三万二〇〇〇円)を支出したものと推認することができる。

4  付添看護の費用

(一) 職業付添

〈証拠〉によれば、請求原因三3(一)の事実が認められる。

(二) 近親者付添

〈証拠〉によれば、三田市民病院における前記二八二日にわたる入院期間中、原告は意識消失の重篤な症状が長期間にわたつて継続し、その間絶対安静が必要であつたにもかかわらず、無意識のうちに体を激しく動かして苦しむことがしばしばあり、これを制止するのに二、三名の大人の力を必要としたこと、意識回復後も、気管切開手術を受けるなどしたため、自己の意思で体を動かしたり、意思を他人に伝えたりすることもできない状態が続き、三田市民病院を退院するまで殆んど寝返りすら打つことができなかつたこと、そのため、原告の母田中美智子及び原告の婚約者(その後婚姻により夫となる。)河野三男の両名が、右期間中継続して原告の付添看護に当たつたことがそれぞれ認められる。

右認定事実によれば、右近親者による付添看護のため少なくとも、一日当たり七〇〇〇円(二名分合計一九七万四〇〇〇円)の費用を必要としたものと推認するのが相当である。

5  装具・自宅改造費

〈証拠〉によれば、請求原因三4の事実が認められるところ、原告の受傷及び後遺障害の内容・程度に照らせば、右認定の費用の支出は必要かつ相当なものというべきであつて、本件事故と相当因果関係に立つ損害といわなければならない。

6  休業損害

原告が高等学校卒業後郵政省郵政事務官に採用され、本件事故当時宝塚駅前郵便局に勤務していたことは当事者間に争いがないところ、〈証拠〉によれば、原告は昭和三三年六月一三日生まれで、昭和五二年四月から郵政事務官として郵便局に勤務し、本件事故に遭うまで、健康で勤勉に稼働していたものであり、その勤務態度も良好で、昭和五七年四月一日以来本件俸給表三級三九号俸の俸給を支給されていたこと、同号俸の月額は、昭和五九年度においては一一万七四〇〇円であつたが、この俸給のほかに調整手当・超過勤務手当・特殊勤務手当・期末手当・勤勉手当等の各種手当(ただし、通勤手当を除く。)の支給を受けていたため、昭和五六年一一月から同五七年一〇月までの事故前一か年間の給与所得の合計額は二六五万八四七七円であつたことがそれぞれ認められ、この認定を左右するに足りる証拠はない。

しかして、前記認定のとおりの原告の治療経過に照らせば、原告が昭和五七年一二月一日から同五九年四月三〇日までの五一五日間にわたり全く就労することができなかつたことは明らかであり、かつ、右認定の原告の勤務や収入の状況からすると、原告は、本件事故に遭わなければ、少なくとも事故前と同様の給与所得(三七五万一〇〇一円)を得ることができたものといわなければならない。

2,658,477÷365×515=3,751,001(円)

しかるに、成立に争いのない甲第七号証及び証人山口久夫の証言によれば、原告はその期間分の給与として二二八万四八七六円の支給しか受けることができなかつたことが認められるので、その差額一四六万六一二五円が右期間中の休業損害である。

7  将来の逸失利益

本件事故当時原告が俸給表三級三九号の俸給を支給されていたことは前記認定のとおりであるところ、〈証拠〉によれば、郵政省の職員の場合、その在職期間中、休職、欠勤、病気休暇等の特段の事情のない限り、毎年四月一日付で本件俸給表に定める俸給が四号俸ずつ上位の号俸に昇給する取扱いであること、本件事故前一年間の原告の給与所得のうち定額支給されるもの(俸給・調整手当・期末・勤勉手当)は約八割であつて、残余の約二割は勤務状況に応じて支給される諸手当であつたことがそれぞれ認められるところ、右認定の事実関係に照らせば、原告は、本件事故に遭わなければ、前記症状固定時以降も郵政事務官として勤務し、その間毎年、本件俸給表に従い三級三九号から四号俸ずつ昇給した俸給の支給を受けるとともに、所定の時期に定額支給される調整手当、期末・勤勉手当のほか少なくとも俸給の一割に当たる超過勤務手当・特殊勤勉手当等の諸手当の支給を受けることができたはずであるといわなければならない。

ところで、原告は、本件事故に遭わなければ満六〇歳までの三五年間引き続き郵政事務官として郵便局に勤務していたはずであると主張し、原告本人も、定年まで勤め上げるつもりであつた旨供述しているけれども、たとえ現にそのつもりであるとしても遠い将来のこととて、どのような事情の変化が生ずるやも測り難く、原告の主観的意図どおりに事態が推移するかどうかを予測することは極めて困難というよりほかはない。しかるに、〈証拠〉によれば、郵政省に勤務する高等学校卒業の女子郵政事務官の昭和六〇年一〇月二日の時点における平均在職年数は一五年一〇月であることが認められるので、他に特段の事情の認められない本件の場合、本件事故に遭うことなく原告が郵政事務官として勤務したであろう勤務年数も右一五年一〇月であつた蓋然性が最も高いものとみるのが相当であり、したがつて、原告も、その時点で郵政省を退職するとともに、退職後は満六七歳に至るまでの就労可能な三二年間にわたり、毎年少なくとも昭和六〇年度賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計三五歳女子労働者平均給与額二四八万八〇〇〇円に相当する収入をあげ得たものと推認すべきである。そこで、以上の認定事実を前提とし、原告が失うことになる収入総額からホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して、その逸失利益の症状固定時における現価を算出すれば、次の(一)ないし(三)の合計五九〇七万七八〇四円となる。

(一) 在職中の逸失利益(給与所得)

前記症状固定時である昭和五九年五月七日に原告が支給を受けるはずであつた本件俸給表三級四七号俸の俸給に、所定の調整手当・期末手当・勤勉手当を加算し、これに俸給の一〇パーセントの割合による超過勤務手当・特殊勤務手当を加えた金額をもつて症状固定後第一年目の所得総額とし、以後在職期間と推認される症状固定後第九年目まで別紙逸失給与計算表のとおり昇給するものとした上、各年別ホフマン計数を乗じて算出すれば、その間の逸失利益(給与所得)の合計額は二〇七二万一九八三円となるところ、〈証拠〉によれば、原告は、事故後昭和五九年四月三〇日までに支給を受けた前記二二八万四八七六円の給与以外に、昭和五九年五月一日以後さらに九三万一〇二五円の給与の支払を受けたことが認められるのであるから、これを控除した差額一九七九万〇九五八円が逸失利益(給与所得)の額となる。

(二) 得べかりし退職金

前記認定事実によれば、原告の退職時における俸給は、別紙逸失給与計算表のとおり本件俸給表三級七九号俸(月額一六万八六〇〇円)と推認されるところ、国家公務員等退職手当法三条一項によつて算出される退職金の額に九年のホフマン計数を乗じて年五分の割合による中間利息を控除し、右退職金の症状固定時の現価を算出すれば、一九三万〇〇二四円となる。

(168,600×100/100×10+168,600×110/100×6)×0.6896=1,930,024(円)

なお、国家公務員等共済組合法に定める退職年金は、組合員期間が二〇年以上である者が退職したときに支給されるものであるから(同法七六条一項)、在職期間一五年一〇月で退職するものと推認される原告の場合、かりに本件事故がなかつたとしても、その支給を受けることができなかつたものといわざるをえないから、これを逸失利益として計上することができない。

(三) 退職後の逸失利益

前掲の統計数値に基づき、前記退職後に得べかりし収入総額からホフマン式計算法によつて年五分の割合による中間利息を控除してその症状固定時における現価を算出すれば、三七三五万六八二二円となる。

2,488,000×(22.2930−7.2782)=37,356,822(円)

8  将来の介護料

前記認定の原告の後遺障害の内容・程度に照らせば、原告は、前記症状固定時(当時原告は二五歳)より五六年間(昭和五九年度簡易生命表二五歳女子平均余命年数)にわたり、日常生活につき随時他人の介護を必要とするものであり、これに要する介護料は一日当たり二〇〇〇円の割合であると推認するのが相当である。

そこで、右介護料総額からホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して、その症状固定時における現価を算出すれば、一九二二万四八四二円となる。

2,000×365×26.3354=19,224,842(円)

9  慰藉料

原告が本件事故により重傷を負い、生涯にわたつて極めて重篤な後遺障害に苦しむことになつたことは前記のとおりであつて本件証拠上認められる諸搬の事情を斟酌すれば、それによつて原告の受けた肉体的精神的苦痛を慰藉するに足りる慰藉料の額は二〇〇〇万円とするのが相当である。

10  弁護士費用

弁論の全趣旨によれば、原告が、本訴の提起及び追行を弁護士である原告訴訟代理人に委任し、その費用及び報酬の支払を約したことが認められるところ、本件事案の内容、審理経過、認容額等の諸事情に照らすと、本件事故と相当因果関係に立つ損害として賠償を求め得る弁護士費用の額は、三五〇万円と認めるのが相当である。

なお、前掲乙第一号証(自家用自動車保険普通保険約款)によれば、右約款上、被保険者の支出した費用のうち、加害者に対する損害賠償請求権の保全又は行使に必要な手続をするために保険者の書面による同意を得て支出したものは、これを損害の一部とみなす旨の定め(無保険車傷害条項第九条)があることが認められるところ、原告が右請求権の行使に必要な手続である本訴の提起につき被告会社の書面による同意を得たことについてはこれを認めるに足りる証拠がない。しかしながら、右条項第九条の規定は、被保険者が権利保全・行使の手続をとるにつき保険者も利害関係を有するところから、これに保険者の意思を反映させ、かつ、同意の有無について紛争の生ずることを予防する趣旨のものであつて、保険者の書面による同意のない権利保全・行使の費用については一切これを損害とは認めず、保険金の額に加算しないとの趣旨まで含むものではないと解するのが相当であり、必要かつ相当な権利保全・行使の手続のための費用である以上、これもまた賠償義務者の賠償すべき損害として保険金の額に加算することを否定するものではないというべきである。しかるに、原告の被告池田に対する本訴請求が必要かつ相当な権利行使手続であることを否定する根拠は何ら見当らないので、右弁護士費用もまたこれを保険金の額に加えるべきものといわなければならない。

三損害の填補

請求原因四の事実は、当事者間に争いがない。

四遅延損害金

前掲乙第一号証によれば、自家用自動車保険普通保険約款上、無保険車傷害条項に基づく保険金は、被保険者において、事故による後遺障害が生じた後、無保険車事故の発生した事実及び被保険者がこれにより被つた損害の額又は傷害の程度を証明する書類等を添えて保険者に対し、右保険金の支払を請求する手続をした日から三〇日以内に支払うものとする旨(約款第六章第一九条、同二〇条)定められていることが認められるところ、原告が被告会社に対し右保険金の支払を請求する手続をしたことは当事者間に争いがなく、〈証拠〉によれば、右請求手続が所定の方式に則つてなされたこと、請求手続の日が遅くとも昭和六〇年一月一九日であることが認められる。

右事実によれば、右保険金支払義務は昭和六〇年二月一九日その履行期が到来し、その翌日である同月二〇日から遅滞に陥つたものといわなければならない。

第二被告池田に対する請求について

一被告池田は、適式の呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しないので、請求原因一及び二の各事実はいずれも自白したものとみなす。

右事実によれば、被告池田は、自賠法三条により本件事故によつて原告の被つた損害を賠償すべき責任があるものといわなければならない。

二そこで、右損害及びその額について検討するに、請求原因三1ないし9の事実については、いずれも被告池田において前同様自白したものとみなすべきであるが、民事訴訟法一四〇条三項、一項による擬制自白の対象となるのは事実に限られ、法律上の陳述はもとより、経験則や損害の評価に関する陳述についても擬制自白が成立する余地はないといわなければならない。

そのような観点から本件損害及びその額について判断すれば、以下のとおりである。

1  請求原因三1(治療費)、同3(一)(職業付添人の費用)、同4(装具・自宅改造費)の事実については全部擬制自白が成立し、その事実によれば、原告主張のとおり損害が生じたものといわなければならない。また、同5の事実については、五一五日間の入院期間中、原告において従前どおり稼働しておれば同期間中に三七五万一〇〇一円の給与を受けえたはずであるとの点(これは経験則に基づく判断である。)を除いては自白したものとみなされ、右の点は右争いのない事実から経験則上これを認めることができるので、この関係でも原告主張どおりの損害が生じたものというべきである。

2  請求原因三2の入院雑費については、当事者間に争いはないけれども、そのうち入院期間中一日当たり一〇〇〇円を超える部分は本件事故と相当因果関係に立つ損害ということができないので、賠償すべき損害と認められるのはその限度であるというべきである。

3  請求原因三3(二)(近親者付添に要した費用)については、原告が三田市民病院に入院中の二八二日間にわたり近親者二名の付添看護を必要とする状態にあつたことは前記のとおり当事者間に争いのないところであるけれども、そのための費用のうち近親者一名につき一日当たり三五〇〇円(一日当たり七〇〇〇円)を超える部分は、本件事故と相当因果関係に立つ損害ということができないので賠償すべき近親者付添費の額は一九七万四〇〇〇円である。

4 請求原因三6(逸失利益)についても、本件事故がなければ原告が満六〇歳までの定年退職の時まで引続き郵政事務官として勤務したはずであるとの点及びこれを前提とする主張分部(これも経験則に基づく判断である。)を除いて当事者間に争いがないことになるが、右の点について擬制自白が成立する余地はないというべきところ、当事者間に争いのない同6(一)の事実関係から直ちに、原告主張の右の点を推認すべき証拠もしくは事実は見当らない。のみならず、〈証拠〉により郵政省に勤務する高等学校卒業の女子郵政事務官の昭和六〇年一〇月二日の時点における平均在職期間が一五年一〇月であることが認められること、したがつて、特段の事情の認められない本件の場合、原告も右期間在職したのち退職し、その後は満六七歳に至るまで前同様の女子労働者平均給与額に相当する収入をあげ得たものと推認すべきことはいずれも前記のとおりであるから、結局、原告の将来の逸失利益は、前記第一の二7のとおりであるといわなければならない。

なお、〈証拠〉は、弁論の分離中に被告会社との関係でのみ証拠調がなされたものであるがその後弁論が併合されたのであるから被告池田に対する関係でも当然に証拠資料となるものである。

5 請求原因三7(将来の介護料)のうち、同(一)の事実については当事者間に争いがないことになるが、同(二)の点は経験則に基づく判断であつて擬制自白が成立する余地はないというべきところ、右(一)の事実によれば、前記第一の二8のとおり推認するのが相当である。

6 請求原因三8(慰藉料)の事実(但し、慰藉料の額は法的判断の結果であつて事実ではない。)も被告池田において自白したものとみなすべきところ、右事実及び諸般の事情に照らせば、慰藉料の額は前記第一の二9のとおり二〇〇〇万円とするのが相当である。

7 請求原因三9(弁護士費用)の事実についてもこれを自白したものとみなすべきであるが前記第一の二10と同様の理由により、本件事故と相当因果関係に立つ損害として賠償を求めうる弁護士費用の額は、右一〇〇〇万円のうち三五〇万円というべきである。

三請求原因四の事実(損害の填補)はこれを自白したものとみなす。

第三結論

以上の次第で、原告の本訴請求は、自賠法三条に基づき被告池田に対し、前記第二の二1ないし7の合計額一億〇七五三万一四一一円から同第二の三の既払額六六八七万円を控除した残額四〇六六万一四一一円とこれに対する本件事故の後である昭和六〇年二月一五日から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金、本件契約に基づき被告会社に対し、前記第一の二2ないし10の合計額一億〇七五三万一四一一円から同第一の三の既払額六六八七万円を控除した残額四〇六六万一四一一円とこれに対する前記昭和六〇年二月二〇日から完済まで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当として棄却し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官藤原弘道 裁判官山下満 裁判官橋詰 均)

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